占い師として大切にしていること
占いをする仕事をしていると、年に何度か、「この仕事をしていて、いちばん大切にしていることは何ですか」と尋ねられる機会があります。
そのたびに、いくつかの答えが頭に浮かびます。勉強を続けること、相手の話をよく聴くこと、自分の直感を信じること——どれも本当のことです。けれど、一番奥にある答えは、いつもひとつです。
それは、「答えを教えるのではなく、気づいてもらうこと」。
答えは、すでにその人の中にある
占いに来てくださる方の多くは、すでに答えを、自分の中に持っておられます。
ただ、その答えが、日々の忙しさや、周囲の声や、自分自身の不安に押し流されて、見えなくなってしまっている。だから、占い師に会って、カードを広げて、その見えなくなったものを、もう一度そっと拾い上げる作業が必要になるのだと感じます。
だから私は、「こうなります」「こうしなさい」とは、極力言わないようにしています。代わりに、「こういう見方もあるかもしれません」「こんな言葉が、カードから聞こえてきます」と、できるだけ柔らかく、いくつかの角度で、お伝えするようにしています。
最後に選ぶのは、いつでもその方自身。私の役割は、少し離れた場所から、月明かりをお借りして、足元をほんのり照らすことくらいなのです。
沈黙を、急がない
鑑定のなかで、大切にしていることのひとつに、「沈黙を急がない」というものがあります。
カードを引いたあと、一瞬、言葉が出てこない瞬間があります。お客さまの方も、何かを受け止めようとして、静かになる時間があります。
その沈黙を、私は埋めようとしません。代わりに、自分の呼吸を整えながら、相手がその沈黙のなかで、何かを感じ取るのを、ただ待ちます。
言葉が追いつかない時間というのは、案外、一番豊かなものが受け渡されている時間です。そこを急いで説明で埋めてしまうと、大切な何かが、こぼれ落ちてしまう気がしています。
占いは、道具であって、神さまではない
これも、常々自分に言い聞かせていることです。
カードも、星も、数字も、とても素晴らしい「道具」です。けれど、それはあくまで、人生を見つめるためのレンズであって、絶対的な真理ではありません。
だから、もし占いの結果が気に入らなかったら、その結果に縛られる必要はまったくないのです。別の占術で見てみるのもいいし、時間をおいてもう一度引いてみるのもいい。自分の違和感を、占いより下に置かないこと。
占いは、あなたに仕えるものであって、あなたを縛るものではない。そのことを、いつも心に留めていただけたらと思います。
お客さまの時間を、預かっているという感覚
鑑定は、お金と時間を、お客さまが差し出してくださることで成り立っています。
その時間を預かっているという感覚は、年を重ねるごとに、どんどん重く感じるようになってきました。一回一回の鑑定を、決して流れ作業にしないこと。前のお客さまの空気を、次の方に持ち越さないこと。
だから、鑑定と鑑定の間には、必ず短くてもよいので、お部屋を整える時間を挟むようにしています。窓を開けて、軽く空気を入れ替え、カードを軽くシャッフルし直し、自分も深呼吸を一度だけ。
そうやって、毎回、まっさらな場所で、新しい方をお迎えする。それが、私なりの、ささやかな礼節のつもりです。
占い師である前に、ひとりの人間として
最後に、これが一番大切なのかもしれません。
占い師である前に、ひとりの人間として、目の前の方と同じ地平に立つこと。上から見下ろさないこと。特別な力を持っているような顔をしないこと。
カードを読む技術や、占星術の知識は、もちろん大切です。けれどそれ以上に、ひとりの人として、どれだけ誠実にその場にいられるか。これが、占い師という仕事の、一番の核だと思っています。
ここに来てくださるあなたに、お会いできる日を、静かに楽しみにしています。
