ラベンダーの魔法 ― 心を鎮める薬草の使い方
夏の終わり頃、庭の隅でラベンダーが薄紫の花をつけると、毎年決まって「ああ、また今年も摘もう」と思います。
束にして逆さに吊るし、日陰でゆっくり乾かす。数週間すると、花はしっかりと色を保ったまま、手で揉めばあの懐かしい香りが立ちのぼる、優しい乾燥花になります。
ラベンダーは、魔女たちにとって「心を鎮める薬草」として、古くから大切にされてきました。今日は、このちいさな紫の花と、一緒に暮らすための、いくつかのささやかな方法をお伝えします。
ラベンダーが愛されてきた理由
ラベンダーの歴史は、思いのほか長いものです。
古代ローマでは入浴に使われ、中世ヨーロッパでは修道院の薬草園で大切に育てられていました。語源のラテン語「ラヴァーレ(洗う)」には、心と身体の両方を浄めるという意味が込められていると言われています。
不安を鎮め、眠りを助け、空間を清める。そんな多才な働きを持つラベンダーは、魔女の薬草棚の中でも、必ず一番手前の瓶に収まっているような、そんな存在だったのです。
ラベンダーのお風呂
一番おすすめしたいのは、ラベンダーを入れたお風呂です。
乾燥したラベンダーをひとつかみ、小さな布の袋(お茶パックや木綿の手拭いで代用できます)に入れて、口をきゅっと結ぶ。お湯を張った湯船にそっと浮かべれば、それだけで、浴室の中に穏やかな香りが広がります。
ひとつ注意があります。花をそのまま湯船に浮かべてしまうと、排水口が詰まりがちになるので、必ず袋に入れてください。使い終わった袋は、新聞紙にくるんで捨てれば、ごみ箱の中まで良い香りにしてくれます。
一日の終わりに、ラベンダー湯にゆっくり浸かる。それだけで、こわばっていた肩や、話せなかった心のざわめきが、少しだけ解けていくような気がします。
枕元に置くピローミスト
眠りの質を少しでも良くしたいという方には、ラベンダーのピローミストをすすめています。
作り方はとても簡単です。無水エタノール5ミリリットルに、ラベンダーの精油を5滴ほど落として、よくなじませる。そこへ精製水を45ミリリットル加えて、遮光スプレー瓶に入れて、よく振る。それだけで、50ミリリットルのピローミストができあがります。
寝る前に、枕と布団の上にシュッと一吹き。深く息を吸い込むと、ラベンダーのかおりが、その日一日の疲れをそっと包んでくれるように感じられます。
冷蔵庫で保管すれば、だいたい一ヶ月ほど持ちます。使い切ったら、また新しいものを。季節ごとに少しずつ変えていくのも、楽しい習慣です。
小さなお守り袋をつくる
もうひとつ、古くから伝わる使い方があります。それは、ラベンダーを詰めた「お守り袋」を持ち歩くこと。
リネンや綿の小さな布袋に、乾燥ラベンダーをほんの一掴みだけ詰めて、口を麻紐で結ぶ。それだけの、本当に素朴なお守りです。
通勤用のかばんの内ポケットに、出張鞄の隅に、デスクの引き出しの奥に。ふとした瞬間にかばんを開けると、ふわっと香りが立って、張り詰めていた気持ちがゆるむ——そんな小さな守り神のような存在になります。
月に一度、袋の上から軽く揉んであげると、香りが蘇ります。半年ほどで香りが弱まってきたら、中のラベンダーを新しいものと入れ替えて、古いものはお庭や植木鉢の土の上に還してあげる。そうやって、季節と共に回っていくお守りです。
ラベンダーと暮らすということ
ラベンダーを暮らしに取り入れるというのは、何か特別なことをするというよりも、「心がほんの少し疲れたときに、手を伸ばせる場所を、自分のそばに作っておく」ということなのだと思います。
お風呂に浮かべる小さな袋。枕元のスプレー瓶。かばんの奥のお守り。そのどれもが、あなた自身の心の味方です。
薬草は、押し付けがましくありません。ただそこに居てくれて、必要なときに手を取ってくれる。そういう、やさしい同居人のようなものなのです。
